主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和2年 6月号

コロナ禍

コロナ禍の街へ春雷割れにけり
春愁の瞼重たくマスクして
防疫のマスク二重に春菜買ふ
疫病(えやみ)の世ぽたぽた散りて八重桜
桜蘂降つて砂場に子ら見えず
チューリップ散つて影失()す石畳
    悼 紺井てい子さん
白牡丹ゆれゐし君の一生(ひとよ)なる
遥かなるものへ匂へり夕牡丹

令和2年 5月号

初 蝶

高嶺へと初蝶白く点滅す
野遊の地酒かぽかぽ畦伝ひ
野をゆけば野の花群るる西行忌
蟻穴を出て寺域に影引けり
朴訥な枝々を張り花こぶし
山茱萸の咲くやショパンの曲めきて
干鰈を炙り浅酌安吾の忌
   林徹先生を偲び
先生の忌や山巓は霞引き

 

令和2年 4月号

薔薇の名

浅春のどんぐり山へ子連れ鹿
猿除の柵は万里に山笑ふ
下モの田へ宮の山茶花はらはらと
鳥交り槙の葉ゆるる一ところ
永き日を壁塗の箆(へら)滑るかな
針めきてきらめくそばへ牡丹の芽
薔薇の名はピースとアンネ芽吹濃し
折鶴の万羽吊され鳥雲に

 

令和2年 3月号

立金花

大富士の白々しだれ春浅き
厨から笛吹く薬缶春の雪
音高く燃ゆる古草白けむり
春の日は湖より昇り立金花
手のひらに軍鶏の地卵春来る
白梅の夕べ青ざめ兜太の忌
林芙美子記念館 二句
竹さやぎ芙美子旧居の春立てり
春炬燵芙美子の戻る気配もし

令和2年 2月号

雪吊の弦

鵯の雪吊の弦揺らし去る
やはらかく抱かれ残菊括らるる
冬の蜘蛛皇居の森に六肢張り
裸木の瘤の艶なる欣一忌
大川に笑窪のあまた初霰
鰭酒を交はす侃々諤々と
奉納へ酒瓶抱へ枯野道
拝殿を作業着埋むる初祓

令和2年 1月号

初景色

琵琶のうみ暁雲紅く年立てり
にほどりへ鳶の大き輪初景色
隠れては現はる濤の浮寝鳥
風立ちて銀杏の雨四方に鳴る
己が根を打つて銀杏はねゐたる
しろがねの満月の出て朴落葉
合戦の絵馬へ笹鳴き越の国
加賀の国落葉激しく降る日かな