主宰俳句
田島 和生 主宰俳句
令和3年 4月
牡丹の芽
オリオンの闇へ擲(なげう)つ鬼の豆
つくばひの水鳴つて春立ちにけり
青天の鬼瓦から雪解水
牡丹の芽高さ違へてほむらめき
鉛筆を削る香あまき木の芽どき
銹色の無蓋車行けり蕗の花
悼 青木和枝さん 二句
君逝きてさざん花白く香るなり
面影や春の風花乱れ舞ふ
令和3年 3月
野水仙
父と子と犬が丘ゆく初日影
鯉浮いてもの言いたげに四温かな
大寒やゆゑなく頬の火照りゐし
人日の軋む引戸へ油差し
高嶺より瀬のほとばしる野水仙
舌先へ山気しみじみ冬苺
鶏小屋の裏の風みち鼬罠
少年のスパイク磨き春近し
令和3年 2月
時雨虹
落日へ初鴨のみな向きゐたる
手酌せる酒は山の名十三夜
しぐれては湖北は虹をあまたたび
時雨虹くぐれる二羽のとんびかな
極月の屋根師の影が空歩む
叡山をからくれなゐの落葉かな
山茶花の白ちりゆけば紅(くれなゐ)も
ひよどりとパンを頒ちて冬籠
令和3年 1月
水 鳥
水鳥のこゑの暮れゆく浮御堂
羽搏きて水に水鳥まろぶかな
にほどりの浮んで嘴に光るもの
手酌酒肩へたまゆら散紅葉
柊の花つつましく白に凝り
怒り目へ軍鶏は枯野の日を点じ
無人駅指してくねりて枯野道
木枯のぶつかつて木の家が鳴り