主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和2年 1月号

初景色

琵琶のうみ暁雲紅く年立てり
にほどりへ鳶の大き輪初景色
隠れては現はる濤の浮寝鳥
風立ちて銀杏の雨四方に鳴る
己が根を打つて銀杏はねゐたる
しろがねの満月の出て朴落葉
合戦の絵馬へ笹鳴き越の国
加賀の国落葉激しく降る日かな

令和元年 12月号

小 げ ら

五位鷺の低く鳴きゆく稲光
こち見ては鼬はねゆく赤まんま
翡翠(かはせみ)の石へて石へ水の秋
秋の瀬の岩根鳴らして遠く去り
加賀なれや欅落葉の舞ひ上る
小げら来て鳴らす城址の老桜
色町へ隠れ崖道茨の実
     一葉記念館
花魁の憩ひし木椅子照葉かな



令和元年 11月号

紫 苑

みづうみへ微光の散りて小鳥来る
湖の日が町にまんめん花芙蓉
弾めきて熊蟬の頬掠めたる
神鐘の映す加賀梨肩光り
新走り味はふ独り場末かと
宰相の畝のポスター案山子めき
翅ゆれて蝶の吸ひつく落棗
紫苑剪るまはりの紫苑ゆるる中



令和元年 10月号

処 暑 の 雨

富士の嶺は藍を深めて晩夏かな
月下美人月は雲間を飛びにけり
灼くる道舌ひらひらと犬曳かれ
闇雲に小蟻走りて原爆忌
      東京 豊洲市場
糶あとの深海めきて市涼し
手籠下げ文庫本買ふ跣の子
原つぱに緩急自在朝の蟲
一日を読み書き眠り処暑の雨



令和元年 9月号

一 の 宮

一の宮苔の花咲く力石
泥の目の空蟬二つ僧の墓
金沢の溽暑極まり袋小路
遠嶺まで青田波ゆれ兄の家
捩花の影の移れる稿籠
     祇園会 三句
長刀へ天つ日きらり鉾廻し
月鉾を襷に倚りて待ちゐたる
黒揚羽舞ふや遠より次の鉾



令和元年 8月号

烏 の 子

小津映画終はりて街は緑雨かな
万緑へ仁王はつしと手を広げ
夕刊を立ち読む習ひ花あやめ
声わろきされどかはゆき烏の子
若き日の父に似し人カンカン帽
父の忌の浜風湿り合歓の花
     悼 石黒哲夫さん
白山の百合を心に逝かれしか
みづうみはゆれ我もゆれ五月雨