主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和2年 3月号

立金花

大富士の白々しだれ春浅き
厨から笛吹く薬缶春の雪
音高く燃ゆる古草白けむり
春の日は湖より昇り立金花
手のひらに軍鶏の地卵春来る
白梅の夕べ青ざめ兜太の忌
林芙美子記念館 二句
竹さやぎ芙美子旧居の春立てり
春炬燵芙美子の戻る気配もし

令和2年 2月号

雪吊の弦

鵯の雪吊の弦揺らし去る
やはらかく抱かれ残菊括らるる
冬の蜘蛛皇居の森に六肢張り
裸木の瘤の艶なる欣一忌
大川に笑窪のあまた初霰
鰭酒を交はす侃々諤々と
奉納へ酒瓶抱へ枯野道
拝殿を作業着埋むる初祓

令和2年 1月号

初景色

琵琶のうみ暁雲紅く年立てり
にほどりへ鳶の大き輪初景色
隠れては現はる濤の浮寝鳥
風立ちて銀杏の雨四方に鳴る
己が根を打つて銀杏はねゐたる
しろがねの満月の出て朴落葉
合戦の絵馬へ笹鳴き越の国
加賀の国落葉激しく降る日かな

令和元年 12月号

小 げ ら

五位鷺の低く鳴きゆく稲光
こち見ては鼬はねゆく赤まんま
翡翠(かはせみ)の石へて石へ水の秋
秋の瀬の岩根鳴らして遠く去り
加賀なれや欅落葉の舞ひ上る
小げら来て鳴らす城址の老桜
色町へ隠れ崖道茨の実
     一葉記念館
花魁の憩ひし木椅子照葉かな



令和元年 11月号

紫 苑

みづうみへ微光の散りて小鳥来る
湖の日が町にまんめん花芙蓉
弾めきて熊蟬の頬掠めたる
神鐘の映す加賀梨肩光り
新走り味はふ独り場末かと
宰相の畝のポスター案山子めき
翅ゆれて蝶の吸ひつく落棗
紫苑剪るまはりの紫苑ゆるる中



令和元年 10月号

処 暑 の 雨

富士の嶺は藍を深めて晩夏かな
月下美人月は雲間を飛びにけり
灼くる道舌ひらひらと犬曳かれ
闇雲に小蟻走りて原爆忌
      東京 豊洲市場
糶あとの深海めきて市涼し
手籠下げ文庫本買ふ跣の子
原つぱに緩急自在朝の蟲
一日を読み書き眠り処暑の雨