主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和3年 6月

松の芯

苔吸つて鯉の口鳴るうららけし
裏道は風の往き交ひ郁子の花
雄心の見えて直ぐなる松の芯
雲間より鶯のこゑ落ち来る
天つ日をよぎる落花のあまたたび
水割つて亀の顔出す花の塵
大甕の底ひの目高雲白き
奥の間の灯明ともり燕の巣

令和3年 5月

高 嶺 晴

高嶺晴紙切る音も春めけり
山空を巣組の一枝飛びゆけり
道なりに曲つて村へ初燕
白木蓮(はくれん)や日は刻々と山の裏
なめてみてやはり甘くて山椿
コーヒーのミルク渦なす花ミモザ
ミャンマー政変
テレビから銃声響き冴返る
MRI検査
わが頭輪切に撮られ山笑ふ

令和3年 4月

牡丹の芽

オリオンの闇へ擲(なげう)つ鬼の豆
つくばひの水鳴つて春立ちにけり
青天の鬼瓦から雪解水
牡丹の芽高さ違へてほむらめき
鉛筆を削る香あまき木の芽どき
銹色の無蓋車行けり蕗の花
  悼 青木和枝さん 二句
君逝きてさざん花白く香るなり
面影や春の風花乱れ舞ふ

令和3年 3月

野水仙

父と子と犬が丘ゆく初日影
鯉浮いてもの言いたげに四温かな
大寒やゆゑなく頬の火照りゐし
人日の軋む引戸へ油差し
高嶺より瀬のほとばしる野水仙
舌先へ山気しみじみ冬苺
鶏小屋の裏の風みち鼬罠
少年のスパイク磨き春近し

令和3年 2月

時雨虹

落日へ初鴨のみな向きゐたる
手酌せる酒は山の名十三夜
しぐれては湖北は虹をあまたたび
時雨虹くぐれる二羽のとんびかな
極月の屋根師の影が空歩む
叡山をからくれなゐの落葉かな
山茶花の白ちりゆけば紅(くれなゐ)も
ひよどりとパンを頒ちて冬籠

令和3年 1月

水 鳥

水鳥のこゑの暮れゆく浮御堂
羽搏きて水に水鳥まろぶかな
にほどりの浮んで嘴に光るもの
手酌酒肩へたまゆら散紅葉
柊の花つつましく白に凝り
怒り目へ軍鶏は枯野の日を点じ
無人駅指してくねりて枯野道
木枯のぶつかつて木の家が鳴り