主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和4年 11月

草の花

望の夜のうろこ光りに淡海かな
睫毛まで湖の月光またたけり
栞して本をとぢたる居待月
朝霧や蝶の小枝に果てゐたる
しばらくは帰燕の空に古湊
藷堀の子や藷蔓を鉢巻に
太陽へ並んで子らのさつまいも
句碑となる岩の撫でられ草の花

令和4年 10月

あいの風

坊守の声のやはらかきあいの風
白百合や日蔭に蕊のうすみどり
戸袋にまなつぶ光り守宮の子
ゆらぐ火の奥にゆらぐ火広島忌
音しては甍の端へ遠花火
立秋の湖より蝶の吹かれ来し
初秋の新書をよぎり蝶の影
よく匂ふ海渡りきて青すだち

令和4年 9月

天鼓

潜るとき湖の匂ひの大茅の輪
尊徳の幼な顔銹び青時雨
寝ねがてに天鼓と聞きてはたた神
病むる身を機器に任せて明易し
父に似て熱き番茶の暑気払
初蟬や飢ゑの記憶の少年期
木の家の奥はひんやり百日紅
悼 千田一路氏
梅雨の星あひ酌むことも叶はざる

令和4年 8月

蛍の夜

朝焼の湖心へすでに漁り舟
生国へ電車横ゆれ花うつぎ
しんしんと泡盛の酔ひ蛍の夜
夕刊は戦火の埋むる五月闇
蟻戻る黒き巣穴へ翅を曳き
ラムネ置く石仏に顔らしきもの
稲畑汀子さん 他界
諾へる最期ならむや大南風