主宰俳句

「雉」誌より 田島 和生 主宰 の俳句をお届けいたします。

 毎号、巻頭に主宰俳句が掲載されます。最近の作品をまとめました。

田島 和生 主宰俳句

令和3年 9月

夜干梅

梅の実は赤色黄色濃緑も
日が過ぎて月の浮かんで夜干梅
更くる夜や月下美人は花を張り
濫伐の崖にきのふは合歓の花
炎天へ鋸挽く音の出でゆけり
草茂り棚田は山に戻りしか
夕蟬や猿(ましら)啼きゆく神の森
かなかなのこゑのさざなみ檜山

令和3年 8月

青伊吹

さざなみの果てへうつすら青伊吹
みづうみの風は大きく花あふち
貝風鈴ガラス風鈴湖の風
連山の向かふへ入日行々子
ががんぼの窓打ちやまず比良高嶺
蹲踞(つくばひ)の石の鳴りゐて羊歯若葉
下校児の鈴の鳴りけり立葵
どくだみの花明快に単純に

 

令和3年 7月

歌垣

朝焼の湖のさざなみとめどなし
雨催ひ深紫にあやめゆれ
芍薬の蕾まんまる蟻めぐる
野遊のご隠居集ふ大薬缶
黒南風やコロナ籠りの門軋み
田蛙へ木戸の蛙の声を和し
赤提灯ともるや蛙かしましき

令和3年 6月

松の芯

苔吸つて鯉の口鳴るうららけし
裏道は風の往き交ひ郁子の花
雄心の見えて直ぐなる松の芯
雲間より鶯のこゑ落ち来る
天つ日をよぎる落花のあまたたび
水割つて亀の顔出す花の塵
大甕の底ひの目高雲白き
奥の間の灯明ともり燕の巣

令和3年 5月

高 嶺 晴

高嶺晴紙切る音も春めけり
山空を巣組の一枝飛びゆけり
道なりに曲つて村へ初燕
白木蓮(はくれん)や日は刻々と山の裏
なめてみてやはり甘くて山椿
コーヒーのミルク渦なす花ミモザ
ミャンマー政変
テレビから銃声響き冴返る
MRI検査
わが頭輪切に撮られ山笑ふ

令和3年 4月

牡丹の芽

オリオンの闇へ擲(なげう)つ鬼の豆
つくばひの水鳴つて春立ちにけり
青天の鬼瓦から雪解水
牡丹の芽高さ違へてほむらめき
鉛筆を削る香あまき木の芽どき
銹色の無蓋車行けり蕗の花
  悼 青木和枝さん 二句
君逝きてさざん花白く香るなり
面影や春の風花乱れ舞ふ