同人作品

「雉」誌より、田島和生主宰 推薦の同人作品「同人作品抄」を転載しています。

 誌上の同人作品は、「雉笛集」「白雉集」「飛翔集」「青藍集」があり、それらは同人歴の長さによって分けられています。
 「雉笛集」は、自選六句。その他は、田島 和生 主宰 選となります。
毎月の同人作品から、更に田島主宰の推薦句「同人作品抄」がまとめられます。
こちらには、その「同人作品抄」を転載しています。

同 人 作 品 抄

令和2年 6月号

木葉木菟鳴くや千枚田の日暮     水野 征男
立てかけし櫂のしづくや花の昼    河野 照子
つむじ風たてて山火の起ちあがる   大前 貴之
拭き上げし招き看板風光る      久保 方子
初花の寺に抹茶のみどりかな     越桐 三枝子
浜小屋の戸板に売れる栄螺かな    二宮 英子
花冷や握りばさみの鈴が鳴り     神田 美穂子
大奥でありしところの春の蕗     近藤 弘子
仏具みな磨きて春を籠りけり     小林 美成子
涅槃西風背開きに干す魚かな     柴田 惠美子
姿なき物に怯ゆる四月かな      栗栖 英子
啓蟄や重機の爪の土乾び       清岡 早苗
花冷や干潟を渡る鹿の列       芦田 一枝
日の匂ひ藁の匂ひや蝶生るる     岡本 惠美子
発電の風車の唸り花かんば      福江 ちえり
紅梅の花びらひらり脱衣籠      新谷 亜紀
岩山を行く雲の影躑躅燃ゆ      児玉 明子
藁縄の音して乾き干鰈        平岡 百合子
栄螺焼き隠岐の潮をこぼしけり    萬代 桂子
神木の裂けし根方に蟻出づる     坂口 昌一
一斗缶干す豆腐屋や朝燕       高橋 努
清明や百閒廊下走り拭く       村上 勢津子
山笑ふ連絡船の擦れ違ひ       山崎 和子
退院の夫の一歩へ春の風       山田 智子
谷間に七戸の家や桃の花       渡辺 節子

令和2年 5月号

竹籠のナイフの光鳥雲に       河野 照子
ひろしまの空青々と蝶の昼      井上 久枝
雛段に女盛りの官女かな       大前 幸子
出漁の顔触れ揃ふ焚火かな      中野 はつえ
風光る木立を鳥の移るたび      川口 崇子
鷦鷯(みそさざい)岩木嶺を雲離れゆき 笹原 郁子
刃物選る馴染の露店一の午      近藤 弘子
転がして掃くとりどりの落椿     徳永 詢子
猫抱けば草の匂ひや春隣       黒田 智彦
梅真白少年院へ続く道        寺田 記代
春光の網繕うてゐたりけり      芦田 一枝
病室のベッドに足湯春の雪      木村 浩子
ふらここの少女二人の長き足     松永 亜矢
蜥蜴出て腹暖むる石の上       水野 菊恵
竹籤を削る夫婦や夕永し       浜田 千代美
海光のあまねき街へ初燕       林 さわ子
マネキンの肌へ滑らす春ショール   古岡 美惠子
捨藁を押し上げあまた名草の芽    本多 静枝
鏑矢の楼門越ゆる追儺かな      北嶋 八重
茶が咲いて遠き島々晴れ渡る     田中 生子
土筆摘む指の力を少し抜き      新本 孝子
湾に入る真夜のタンカー冴返る    為田 幸治
冬夕焼ホームにシャドーボクシング  中村 育野
金色の招き猫買ふ午祭        鷹野 早苗
虎口より入ればあまたの落椿     一村 葵生

令和2年 4月号

ひたひたと夜のくる飾納かな     河野 照子
笹鳴や島の畑に立つ煙        井上 久枝
マラソンへ山より上る冬花火     越桐 三枝子
餅花や高い高いを喜ぶ児       中野 はつえ
髪にふれ春の霙をなりしかな     内藤 英子
古書括る主へ雪のちらちらと     井上 千恵子
寄生木の梢の上や雪解富士      藤巻 喜美子
ナフタリン吊す箪笥や春支度     依田 久代
迎春やレジのうしろの招き猫     小谷 廣子
元旦の空ま二つに飛行機雲      田中 忠夫
左義長の雨にちぎるる炎かな     藤井 亮子
どんど焼鷺の塒を照らしけり     浜田 千代美
ブラウスを縫ひ上げ春を待ちにけり  古岡 恵美子
患者食菜飯のみどりまぶしけれ    海野 正男
暗闇の焚火に映る人の影       今田 昌克
宮島の牡蠣ぷつくりと飯の上     広兼 厚子
春泥の大地踏みしめ牛立てり     岡田 栄子
灰神楽浴びてどんどの餅を焼く    小川 誉子
鶚(みさご)鳴く沖に切立ち金華山   為田 幸治
福寿草開く気配の朝日かな      中村 育野
冬終はる薬袋を捻り捨て       鷹野 早苗
大寒や濤立ち上がる奈古の海     生田 章子
春隣靴の散らばる珠算塾       後藤 かつら
笹鳴やざざと溢るる露天の湯     西村 千鶴子
かんなぎの胸元かたく着衣始     下見 博子

令和2年 3月号

ぽんと二羽ぶつかりあうて初雀     河野 照子
下北の海に灯の無き年酒かな      井上 久枝
声荒く漁夫と漁夫との御慶かな     久保 方子
北へ行く巨船が一つ去年今年      近藤 弘子
雪解川雪立ち上がり流れくる      杉本 尚子
海鼠浮く灯台下の潮溜り        伊藤 芳子
インバネスひらひらと駅出で来たる   山田 初枝
石蕗の句碑銀杏落葉の只中に      佐瀬 元子
永らへて五年日記を買ひにけり     徳永 詢子
金粉の踊る年酒を受けにけり      寺田 記代
鹿の糞こぼれ艶めく恵方道       木村 浩子
餅搗くや頭のタオル締めなほし     山田 由美子
父祖の代の梁くろぐろと嫁が君     大片 紀子
薬擂るやうに大根擂りゐたり      海生 典代
力入れ夫の背洗ふ寒の入        川口 眞佐子
徹句碑に置く焼藷とカップ酒      浜田 千代美
仏飯を下げて茶漬に大三十日      中川 章
鉛筆を吊し窯場の新暦         源  伸枝
二日早や御手洗川に鹿の顔       田中 生子
竹筒の酒を賜る年女          長岡 はるみ
冬ざれや野川細りて音もなき      山下 邦子
凍蝶のかなたに大き仏の手       山本 逸美
逆光をくる綿虫のうすみどり      青木 陽子
耳袋かけ門衛の敬礼す         林  暁子
初東風や港に止まる郵便車       山田 智子

令和2年 2月号

見上げても朴の木はなく朴落葉    永田 由子
浅春の水子の後生祈る鐘       水野 征男
落葉降る大嘗宮へいざなはれ     越桐 三枝子
暗がりに傷の匂へる榠樝の実     二宮 英子
竹林の騒ぐ北窓閉ざしけり      川口 崇子
白壁の続く酒蔵実むらさき      梅園 久夫
蒲の穂の傾ぎて絮を飛ばしたる    佐藤 泰子
大根の皮に豪雨の傷の跡       上原 カツミ
椅子固き鮪糶場の飯屋かな      森  恒之
警官に鞄覗かれゐて師走       小林 美成子
暗闇の村のをちこち干大根      小林 亮文
花石蕗や向きを替へては達磨干す   黒田 智彦
木枯や窓にくつきり子の指紋     濱本 美智子
大口を開け歳晩の歯科にをり     堀向 博子
くしやくしやの顔で泣く子や冬林檎  松永 亜矢
指先へ翅震はせて雪螢        藤戸 紘子
母の忌や厨に刻む菊膾        荒井 八千代
大根引く小さき農婦の大きな手    鷹野 ひろえ
墓終ひ読経流るる小春かな      度山 紀子
銀杏の土打つて香を散らしけり    福江 ちえり
冬りんご深く刃を入れレノンの忌   岡田 栄子
千切れ雲浮かぶ稜線冬ざるる     松井 英智子
地を掻きて地鶏の沈み秋深し     金子 仁美
極月や金の盃磨き上げ        村上 勢津子
初時雨遠嶺の遠くなりにけり     西向寺 倫子

 

令和2年 1月号

少年の銛の光りや花野ゆく       鈴木 厚子
身に入むや一葉全集箔うすれ      越桐 三枝子
切株を吹き出す茸神の森        神田 美穂子
山の端の青き日暮や玉子酒       深海 利代子
小豆採る綾子生家の蔵の影       井上 千恵子
書陵部の鉄の窓枠金木犀        森  恒之
木の実降る寺に地獄図極楽図      藤巻 喜美子
山猿の木戸を開けたる神の留守     依田 久代
炊きあがる新米の艶退院す       児玉 幸枝
網の目の走り根乾き冬すみれ      天野 桃花
冬日燦天守に人の影動き        三上 節子
秋祭年寄りが来て昼の酒        塚田 裕介
秋惜しむ庭の木椅子に足垂らし     岡本 美惠子
スケッチの空は群青鳥渡る       水野 菊恵
目薬の口許伝ふ夜の秋         藤井 亮子
方丈の畳拭きをり竹の春        林  さわ子
小豆曳く男へせまる山の影       古岡 美惠子
絵筆持つ夫の横顔文化の日       髙橋 咲子
拭うては仏へ供ふ庭の柿        今田 舞子
萩揺るる病衣を纏ふ妻待てば      大葉 明美
夜半の秋旅の飯屋の句会かな      渡邉 小夜子
干涸びし象の背中や草の絮       長谷川 のり子
葛一葉一葉と口へ山羊食めり      一村 葵生
新米を握るてのひら赤らみて      中村 いつみ
往診の医師の大声秋日和        山田 智子

令和元年 12月号

月山の尾根くつきりと穂絮飛ぶ     田上 さき子
他界めく台風あとの茜雲        藤江 駿吉
畝立てしばかりの土へ秋の蝶      鈴木 厚子
枝先の日ざしに動く鵙の贄       河野 照子
十三夜港に白き巨船泊つ        井上 久枝
天狗茸皇居の雑木雑木林かな      二宮 英子
虫喰の桜紅葉を書に挟み        中野 はつえ
二歩三歩翅立て歩む秋の蜂       川口 崇子
石榴熟れひとつひとつに朝日かな    内藤 英子
焼畑に緋蕪の太る日差しかな      栗原 愛子
錠剤の色とりどりや虫の秋       杉本 尚子
ジオラマの一葉旧居秋灯        左藤 泰子
床山のさやけき櫛の捌きかな      森  恒之
ライオンの耳は眠らず暮の秋      小林 美成子
身にしむや主治医の一語一語こそ    伊藤 芳子
望の潮割つて帰港の診療船       濱本 美智子
窯跡に残る陶片臭木の実        太治 都
終戦日しきりに風の鳴つてをり     松永 亜矢
月の夜や短き夫の影に添ふ       川口 眞佐子
秋ぢやなうと呟く男鱗雲        浜田 千代美
猪肉をひさぐ山家や雨催        篠崎 順子
干し物は野良着ばかりや蕎麦の花    今田 舞子
笙の音の波に消えゆく良夜かな     源  伸枝
村長の土蔵に雀豊の秋         大葉 明美
晩節の妻いきいきと紅葉狩       赤尾 楽暫

令和元年 11月号

教材に教師さげ来る蛇の衣       永田 由子
達磨忌を三日過ぎたり初時雨      水野 征男
蟹が蟹追つかけ望の潮だまり      鈴木 厚子
眼鏡ふく布かはらかき白露の夜     河野 照子
潮騒の浜に火を焚く夜の秋       梅園 久夫
波の秀に乗りては潜く川鵜かな     井上 千恵子
風呂桶に守宮泳いでゐたりけり     山田 初枝
あさがほや朝餉の声の筒抜けに     黒田 智彦
檜葉垣の匂ひの強き野分あと      栗栖 英子
秋涼し島の形に灯がともり       秋本 三代子
早稲の香や安来節聞く粗筵       大片 紀子
経蔵の曝書分厚き扉をひらき      堀向 博子
踊唄流るる被爆ドームかな       石井 和子
藁屋根の軒端をとべり秋螢       岡本 惠美子
梨売の呼び込むお国訛かな       吉野 順子
霧流れ焼印しるき牛の腹        新本 孝子
雲の影次の稲田に移りゆく       松本 惠和
大根蒔き腰を叩きて終はりけり     山下 邦子
大荒れの沖に束の間盆の月       為田 幸治
風の出て山羊の声せる花野かな     萬代 佳子
月天心未完のビルの骨あらは      辻江 恵智子
一人居の煙目にしむ初さんま      下見 博子
丸き目をつぶりて若鵜撥ねづくろひ   鳥谷 恵子
夏座敷奥へ奥へと赤子這ひ       溝田 ちどり
夏惜しむ白き卓布に染み一つ      林  暁子

令和元年 10月号

夜濯の盥に星の降りてきし       鈴木 厚子
空蟬の一葉丸ごと抱へをり       河野 照子
ゑのころや訪ふ人もなき兵の墓     井上 久枝
ひとひらに白磁のひかり蓮散華     大前 貴之
烏賊干すや三角波の日本海       久保 方子
クルーザーの白き椅子拭く台風過    二宮 英子
港湾に鉄くづの山風灼くる       神田 美穂子
旧盆や生家の硬き蕎麦枕        小林 美成子
白百合の香りに噎せる法会かな     小林 亮文
竹の皮脱ぐや蛇崩れしるき山      濱本 美智子
米蔵の梁に並ぶや夏燕         寺田 記代
血の滲む馬刺噛みをる大暑かな     海生 典代
白南風やマストの上を鳶の輪      新宅 良子
休診日メモして帰る土用入       塚田 裕之
原爆ドームに螺旋階段大西日      藤井 亮子
工場のあかりの揺るる梅雨の海     浜田 千代美
開け放つ方丈へ滝ひびきけり      古岡 美惠子
夕端居猫の毛玉の転がり来       福江 ちえり
まのあたり軋みて過ぐる鉾車      新谷 亜紀
寺裏の暗き所に金魚飼ふ        綱木 美年子
炎熱の地を削り取る鉄の爪       望月 満里
梅雨の蝶富士見台より富士見えず    長谷川 のり子
白鷺の近づきゆけり田草取       井上 基子
本好きの母の忌日や今朝の秋      大原 恵子
遠花火果てて潮の香強くなり      迫  美代子

令和元年 9月号

火にからだ炙りし海女の大乳房     永田 由子
いつまでも砂丘の火照り生ビール    久保 方子
実梅採る袋を腹にくくりけり      二宮 英子
草野球外野へ茅花流しかな       左藤 泰子
緑蔭へ猫の先立つ猫の墓        上原 カツミ
白く噴く橅の樹液へ蟻の列       紺井 てい子
梅雨寒のまづ肝吸を啜りをり      杉山 節子
黴の香や役行者に目を凝らし      伊藤 芳子
塩飴をふくみ草刈る夫かな       小林 れい子
浜茶屋の一軒建つて海開        佐瀬 元子
旗振つて貨車切り離す夏蓬       栗栖 英子
かちわりを水に喉越す薬かな      児玉 幸枝
探梅雨や強く匂へる正露丸       太治 都
湖の香の強き町川梅雨に入る      三上 節子
艇庫よりペンキの匂ふ薄暑かな     水野 菊恵
久に繰る母の歳時記梅雨湿り      北嶋 八重
黒南風や椰子の港に船戻る       間野 映子
ピアノ弾く子のワンピース白涼し    山田 美佐子
怒涛散る柱状節理花とべら       児玉 明子
風薫る牝馬の黒き尾にリボン      大葉 明美
書斎の灯妻が点すや梅雨曇       赤尾 楽暫
凌霄の花心に潜る雨の蝶        長岡 はるみ
無駄花の茎長々と南瓜かな       鷹野 早苗
空蝉に地中の匂ひ残りをり       後藤 かつら
梅雨出水ボール流るる先は海      原  万代